夜の11時すぎ、ふと「コンビニ行こうかな」と思う。特に買うものはない。強いて言えばアイスか、炭酸か。でも本当の目的が買い物でないことは、自分がいちばんよく知っている。
部屋着のまま、サンダルをつっかけて外に出る。昼間の熱がすこし残った風。誰もいない道。遠くの信号が青から赤に変わるのを、独り占めで眺める。たった数十メートルの道のりが、夜だというだけで、ちょっとした旅に変わる。
コンビニの明かりは、夜に見るとやけに優しい。自動ドアが開いて、冷たい空気と小さな音楽に迎えられる。棚の間をゆっくり歩いて、結局いつものアイスをひとつだけ持ってレジへ。店員さんと交わす「あたためますか」「大丈夫です」だけの会話も、深夜だとなぜか少し、人恋しさに効く。
帰り道、袋を提げて歩きながら、部屋で悩んでいたことを思い出そうとして、あまり思い出せないことに気づく。たった五分、外の空気を吸っただけなのに、頭の中の空気も入れ替わっている。
行き詰まった夜は、部屋の中で解決しようとしないほうがいい。夜のコンビニまでの五分間は、誰でも今夜から使える、いちばん小さな気分転換だ。アイスひとつぶんの値段で、夜がすこし、軽くなる。
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