「おつかれさまです」。この言葉を、私たちは一日に何度も口にする。すれ違う同僚に、メールの書き出しに、電話の終わりに。ほとんど反射のように。なのにある夜、ふと気づいた。自分自身に「おつかれさま」と言ったことは、一度もない。
それどころか、一日の終わりに自分にかけている言葉は、だいたい逆だった。「今日もあれができなかった」「なんであんなこと言ったんだろう」。布団の中は、反省会の会場になっていた。他人には優しい言葉を配って、自分にだけ、いちばん厳しい。
だから試しに、寝る前に小さく言ってみることにした。「今日も、おつかれさま」。声に出すのが照れくさければ、心の中でいい。最初は本当に、びっくりするくらい照れくさかった。でも不思議なもので、言ってみると、体のどこかがほんの少しゆるむ。
考えてみれば、今日も朝起きて、満員電車に乗って、仕事をして、人に気を遣って、帰ってきた。誰にも褒められないけれど、それは十分に「おつかれさま」に値する一日だ。ねぎらいの資格に、成果はいらない。
一日の最後に自分にかける一言を、反省から、ねぎらいに替える。たったそれだけの習慣だけれど、毎晩積み重なると、自分との仲が少しずつ良くなっていく気がする。今夜、布団に入ったら、どうか言ってあげてほしい。「今日も、おつかれさま」。
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