ある土曜日の朝、ふと思い立ってルールを決めた。「今日は一円も使わない」。コンビニに寄らない、ネットでポチらない、カフェにも入らない。財布と決済アプリを、一日だけ休ませてみる。
やってみて最初に驚いたのは、自分の手癖だった。散歩の途中、喉が渇いた気がして自販機の前で足が止まる。信号待ちで、無意識にセールの通知を開いている。買う気もないのに、だ。「なんとなく使うお金」の入り口は、生活のいたるところに開いていた。
使えないとなれば、あるもので済ませるしかない。家の麦茶を水筒に詰めて、棚で眠っていた本を開いて、夕方は近所をただ歩いた。それだけの一日は、拍子抜けするほど静かで、そして不思議と満ち足りていた。
買い物には、刺激がある。新しいものが手に入る瞬間の、小さな高揚。でも、その高揚を一日だけ断ってみると、自分が「欲しくて」買っていたのか、「暇だから」買っていたのかが、はっきり見えてくる。
何も買わない日は、我慢の日ではなかった。必要なものと、ただの習慣を、静かに仕分ける日だった。月に一度くらい、財布に休日をあげてみる。翌朝に飲む一本のコーヒーが、少しだけおいしくなっているはずだ。
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