夕方、日が傾きはじめる頃に家を出て、あてもなく近所を歩く。ここ最近、それがささやかな習慣になっている。
きっかけは、昼間の暑さだった。日中はとても外を歩く気になれないけれど、夕方になると風に少しだけ涼しさが混じる。その、空気が入れ替わる瞬間の心地よさに気づいてから、日暮れを待つのが楽しみになった。
歩いていると、昼間は気づかないものがよく見える。塀のすきまから伸びた見知らぬ花、どこかの家の夕食の匂い、下校する子どもたちの声。目的地を決めずに歩くと、こういう小さなものたちが自然と目に入ってくる。急いでいるときには決して見えないものだ。
空の色が刻々と変わっていくのも、この時間ならではだ。オレンジから紫へ、そして藍色へ。同じ道を歩いていても、昨日と今日で空はまるで違う。二度と同じ夕暮れはないのだと思うと、なんだか得をした気分になる。
用事もなく、ただ歩くだけの時間。効率だけを考えれば無駄なのかもしれない。けれど、その「無駄」の中にこそ、一日をやわらかく閉じてくれる何かがある気がする。
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